Hera探査機は、2024年10月7日(JST)にケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられ、2026年10月18日(JST)、二重小惑星系からの距離1,280 kmにおいて、単色小惑星フレーミングカメラ(AFC:Asteroid Framing Camera)によって二重小惑星Didymosと衛星Dimorphosを撮像しました。
(参照先:https://www.esa.int/Space_Safety/Hera/First_light_Hera_resolves_two_asteroids_instead_of_one)
Hera探査機は10月22日(JST)に2回目の減速運用(Braking maneuver)を行い、20m/sの相対速度で二重小惑星に接近しています。到着に向けて、最後の微調整を行うトリム噴射を10月25、28、31日(JST)に行い、11月4日(JST)に二重小惑星系から距離20-30 kmの地点に到着します。
Hera探査機にはAFC、ハイパースペクトラルイメージャ(HS-H:Hyper Spectral Imager on Hera)、そして熱赤外カメラ(TIRI:Thermal Infrared Imager)の3種類のカメラが搭載されています。これらの観測機器は、二重小惑星系への接近フェーズから近傍運用の間、二重小惑星系の観測を行います。Heraの近傍での観測運用のミッションタイムラインの概要を図1に、今後の各観測運用フェーズと観測計画を表1に示します。

図1:Heraのミッションタイムライン(原図 (c) ESA)
(引用元:https://www.esa.int/Enabling_Support/Operations/Hera_operations)
表1:今後の観測運用フェーズと観測計画(11月2日時点)
| 年月(JST) | 観測運用フェーズ | 小惑星からの距離 | 観測計画 |
| 2026年11月04日 | 二重小惑星系到着・初期全球観測フェーズ(ECP)開始(約4週間実施) | 20-30km | 質量、形状、公転・自転運動をAFC、HS-H、TIRIで同時観測 |
| 2026年12月02日 | 詳細全球観測フェーズ(DCP)開始(約6週間実施) | 8-20km | 表層地形・内部構造・物性計測のための観測 |
| 2027年01月13日 | 2機の子機分離運用フェーズ(PDP)開始 | 20-30km | Juventas(1/16)分離
Milani(1/30)分離 |
| 2027年02月03日 | 接近観測フェーズ(COP)開始(約12週間実施) | 4-22km | DART衝突によって形成された衛星Dimorphosの人工クレータ観測、低高度からの詳細地形観測、母船と子機による多点計測、および自律近傍運用 |
| 2027年04月28日 | 実験運用フェーズ(EXP)開始(約5週間実施) | 最接近距離2km以下 | DART衝突によって形成された衛星Dimorphosのクレータの詳細観測 |
| 2027年06月 | ノミナル運用終了
|
TBD | TBD(延長運用(EXT)の実施は未定) |
10月2日-11月4日(JST)の二重小惑星系接近フェーズでは、小惑星が点光源として撮像される距離から、次第に大きくなる様子を観測します。はやぶさ2がリュウグウに到着したときのように、次第に大きくなる小惑星の様子を見て、科学者は日々議論をしていきます。
11月4日 (JST)から約4週間実施予定の初期全球観測フェーズ(ECP :Early Characterization Phase)では、2つの小惑星の質量、形状、公転・自転運動の観測のためのDidymosとDimorphosの両方の小惑星の初期の全球観測を行います。Hera探査機は両小惑星を同時に視野内に含めるために小惑星の上空20-30 kmの距離と、地形・形状の観測に有利となる大きな太陽位相角を維持するため、2週間で1周する3:4の長方形型の飛行経路に沿って運用します(図2)。長方形の飛行経路のそれぞれの角では、軌道制御のためのガス噴射を行います(週2回の噴射を実施)。Hera探査機は、長方形の飛行経路を3日または4日かけて飛行しながら、探査機がDidymosを指向し、AFC, HS-H, TIRIがそれぞれ撮像します。飛行経路上からの全機器同時の定期観測(15~20分毎)で両小惑星の全球を観測するほか、TIRIは自転速度の速いDidymos(自転周期2.26時間)の1自転分の連写観測を実施します(図2の赤い四角)。1日に2回ほど探査機の姿勢を変えて地球に方向にアンテナを向けて、データをダウンリンクします。

図2:太陽側から見たECPにおける探査機の飛行経路。座標原点にDidymosと衛星Dimorphosの周回軌道を赤線で示す。赤い四角の部分で、小惑星Didymosの1自転分の連続観測、青い線の部分では一定時間間隔でAFC、HS-H、TIRIの同時撮像を行う。
12月2日(JST)から約6週間実施予定の詳細全球観測フェーズ(DCP: Detailed Characterization Phase)では、ECPよりも詳細な二重小惑星系DidymosとDimorphosの全球観測を行います。Hera探査機は、小惑星の上空8-20 kmの距離を維持し(TIRIでは両小惑星を同時に視野内に含む)、大きな太陽位相角が有利な地形・形状の観測に加えて、重力計測や物性・組成の観測に有利となる小さな太陽位相角を併せ持つ軌道である、蝶ネクタイ型の飛行経路に沿って運用します(図3)。ECPと同様に2週間で1周する蝶ネクタイ型の飛行経路のそれぞれの角では、軌道制御のためのガス噴射を行います。飛行経路を3日および4日かけて飛行しながらECPと同様の観測を実施し、二重小惑星DidymosとDimorphosの表層地形・内部構造・物性計測のための全球観測をより詳細に実施します。

図3:太陽側から見たDCPにおける探査機の飛行経路。座標原点にDidymosとDimorphosの周回軌道を赤線で示す。ECPと同様に、赤い四角の部分で、小惑星Didymosの連続観測、青い線の部分では一定時間間隔でAFC、HS-H、TIRIの同時撮像を行う。
2027年1月13日から2月2日(JST)の子機分離フェーズ(PDP: Payload Deployment Phase)では、小惑星の上空約30kmで2機の6UサイズのキューブサットであるJuventasとMilaniを順に分離します。それぞれ2~3か月に渡って二重小惑星系のまわりを周回し、最終的には衛星Dimorphosに着陸します。Juventasはレーダ観測によって内部構造を調べ、Milaniは可視近赤外分光撮像によって表面の組成を調査します。なお、キューブサットを分離する様子をTIRIでも連続撮像をする予定です。
2027年2月3日 (JST)から約5週間実施予定の接近観測フェーズ(COP: Close Observation Phase)では、赤道上空や北半球、南半球の上空を最高で4kmまで接近する片道3日または4日の連続的なフライバイ観測を実施します(図4)。DCPよりも高解像度での小惑星の表面地形の観測、特にNASAの探査機DART(Double Asteroid Redirection Test)の衝突によって形成された衝突痕(クレータ)の状態などを詳しく調べます。そのほか、より精密な重力計測や内部構造の調査のために、分離した2機の子機と母船が連携した3点計測の実施や、探査機からの特徴的な地形を参照した自律接近運用のテストなどを実施します。軌道の両端では、軌道制御のためのガス噴射を行います。Heraからの観測はECPと同様ですが、最接近時に高速連写を実施することも検討しています(図4の緑の四角)。

図4:太陽側から見たCOPにおける探査機の飛行経路。座標原点にDidymosと衛星Dimorphosの周回軌道を赤線で示す。ECPと同様に、赤い四角の部分で、小惑星Didymosの連続観測、青い線の部分では一定時間間隔でAFC、HS-H、TIRIの同時撮像を行う。また緑の四角の部分では衛星Dimorphos上のクレータの連写を行う。
2027年4月28日から6月2日(JST)のより挑戦的な運用を行う、実験運用フェーズ(EXP: Experimental Phase)では、Hera探査機は最接近時には衛星Dimorphosに距離1km程度まで接近するフライバイ観測運用を行います(図5)。衛星DimorphosのDART衝突クレータの痕の状態や、表層の詳細地形などをCOPよりも高解像度で調査します。最接近中にはTIRIも連続撮像などを行う予定です。このフェーズの運用形態の詳細は検討中です。

図5:北極側からみたEXPにおける探査機の飛行経路。左図は右図の二重小惑星系を拡大したもの。衛星Dimorphosに1km(小惑星Didymosからは約2km)まで接近してフライバイ観測を行う。AFC、HS-Hなど同時観測を実施する。
二重小惑星DidymosとDimorphosに到着後、初期観測と、観測データのキャリブレーションが行われます。Hera探査機の初期観測成果は、11月25日(JST)にドイツのベルリンで開催されるESA主催のHera到着イベントで発表される予定です。
今後、Hera探査機からのデータを引き続き解析し、随時、SNS(X)やホームページにて情報をお伝えしていきます。
人類初の本格的なプラネタリーディフェンスミッションに、ご期待ください!
Hera JAPAN
2026年11月2日
プレスキットはこちらから↓
https://hera.isas.jaxa.jp/wp-hera/wp-content/uploads/2026/11/Hera_Press_Kit_20261102A.pdf
